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オリーブへの想い
オリーブへの想い
オリーブの品種とは
オリーブには品種が約1300種類もあるということをご存知でしたか?
今まで意識したこともなかったオリーブの品種。しかし、その品種ごとに、味はもちろんのこと栽培に適した土地も異なるという。ヨーロッパでは、地域や村ごとに異なる品種のオリーブを栽培し、その地域・村の特色を重んじます。
「ヨーロッパでは、品種を大切にしています。そして、ブレンドではなくて、品種ごと(シングル)のオリーブオイルを楽しんでいます。ヨーロッパでは当たり前のことなんですが、日本ではその価値観が浸透していません。日本で売られているオリーブオイルのほとんどがブレンドなんです。もちろんブレンドが全て悪いわけではありません。シングルのオリーブオイルの味というのは、同じ品種でも毎年変わります。それでも毎年、同じような味を再現するためのブレンドなんです。もしくは、『こういった味のオリーブオイルにしたい』という想いでブレンドされることもあります。」
ヨーロッパでは、品種ごとのオリーブオイルが存在し、その味や香りの違いを楽しむ。
またブレンドにもしっかりとした意味があるという。
なんて豊かな生活だろう。暮らしを楽しむ感覚が、日々の生活に根付いている。
そうした"オリーブのあるべき姿を"わたしはイタリアで目の当たりにしたのだろう。その時に感じたことを日本に還元するべく、わたしたちはオリーブと真摯に向き合っている。
苗のはなし
挿し木と接ぎ木
九州オリーブファームでは、土地に適した品種の苗をイタリアから輸入して栽培・提供しています。
「苗には、挿し木と接ぎ木のがあります。」
※挿し木 : 枝・茎・葉などを切り取り土にさして根を出させて育てる。
※接ぎ木 : 茎や枝をほかの植物につなぎ合わせて1本の植物に育て上げる。
「日本で一般的に流通しているオリーブの苗は挿し木で育てられ、どんな品種か分からないというのが現状です。しかし、私たちは、日本の気象条件に合う品種の苗を全てイタリアから輸入しています。日本でも育つという実績のある品種ですね。それらの苗は、接ぎ木で育てられ、イタリア政府の品種保証が付いています。接ぎ木で育てられた苗は、根が定着しやすく風に強く、木の勢いが良いんです。」
イタリア政府の品質保証がついた苗は、高いのでは?と思われる方もいるかもしれないが、実はそうでもないのです。
「流通の事情を見てみると、挿し木で育てた市販の苗と私たちの接ぎ木で育てた苗とは、ほとんど値段が変わりません。だから、オリーブ生産者には苗からこだわって欲しい。」
それぞれの品種を大切にすることで、土地に合った特長あるオリーブができる。すると日本国内でも多様性が生まれ、オリーブの楽しみ方も純増します。
実のはなし
実の成る作業
「ただ植えるだけで実が成るかっていうと、そうではないんですね。作業が必要なんです。それは、木にストレスを与えてあげることです。具体的には、幹に螺旋状に傷をつけたり、根を切ったり、葉の勢いがある時期に剪定をしたり。そうすることで、木が実をつけるんです。」
木にストレスを与えることで、木自身が「実をつけなければいけない!」と思い込むという。オリーブ農家からよく、「実が成らないんです」という相談を受けるとのこと。その際、親身になって栽培技術の指導をしている。
また、九州オリーブファームでは、樹形にもこだわっています。
「一本立ちにし、低い部分に枝を残さず、木の高さを高くしすぎない。風にも湿気にも強い木になり、作業効率も良くなるんです。」
これは全てヨーロッパと同じ樹形だという。さらには、木を植える間隔も大切にしている。木と木が触れ合うと、そこから病気が発生するのだそう。木と木の間隔は5mずつ。すべては、美味しいオリーブのために。
無駄なく使えるオリーブの話
葉のパウダー
一般的によく知られているオリーブの製品といえば、実の塩漬けやオイルです。
実は、葉も使えるのです。
九州オリーブファームでは、オリーブの葉をパウダーにしてお茶として製品化しています。
日本ならではの技術で粉末化された葉のパウダーは、現在ヨーロッパやアメリカでも注目されていてオリーブの葉には様々な栄養価が含まれており、葉の摂取により健康効果が期待されています。
「粉末は水に溶かしてそのまま飲むことができます。煮出し用のお茶だと、葉そのものを摂取できません。さらに煮出し用のオリーブのお茶は苦味が出てしまうんですよ。」
また、オリーブオイルを作る際に出る実の搾りかすは、化粧品会社が買ってくれるという。そのほかに、実の絞りかすで漬物を作る方や、オリーブオイルと葉のパウダーで無添加の手作り石鹸を作っている人もいるとのこと。
「捨てる部分のない、いいものづくしのオリーブ。これに農薬をかけるのはタブーかな、と感じます。葉のパウダーにしても、自分が摂るものですからね。それを考えると農薬は使いたくないですし、他の生産者たちも農薬は使いたくなくなるはずです。」
九州オリーブファームでは、農薬を使わずにオリーブの栽培をしている。農薬に頼らない栽培方法を確立させ、その技術を徐々に広げていきたいと思っています。
「実際に自分たちでやってみて成功事例を示すことが大切だと思っています。」
将来の話
made in Japan
日本国内におけるオリーブの需要は年々高まっているという。
「オリーブオイルの年間消費量は、10年前は約2万トンでした。それが現在は、6.5万トンです。それだけ日本人がオリーブオイルを消費するようになったということですね。それなのに、国内の生産量は、全部合わせて絞っても10トンもないぐらいです。」
これだけ需要が高まっているオリーブの可能性は底知れない。だからこそ、いかに"正しいオリーブ"を広めていくかが大切だと思っています。
「日本のオリーブ業界を『間違いない方向に持って行きましょう。』ということですね。
わたしたちは、特に九州でオリーブを広めていきたい
「イタリアにおいて、オーガニックなオリーブは南の暖かい地域に多いです。寒い地域だとどうしても病気になるから農薬を使わざるをえない。イタリア南部・シチリアなどの暖かい島では、オーガニックのオリーブはしっかりと成功しています。だから、ここ九州でオーガニックのオリーブを広めていきたいんです。そのためには、まずは実績づくりです。そして、しっかり勉強したものを伝えていくことですね。」
日本の中でも比較的暖かい九州はオーガニックのオリーブを栽培するのに適している。現にわたしたちの圃場では、成功しているのだから。
最後に、将来の展望として
「最終的には海外に"made in Japan"を出せるようにしたいです。TPPが来た時には、"攻めの農業"を皆にやってもらいたいですね。そして、そのためのお手伝いをやっていきたい。また、オリーブ栽培を広めることは、耕作放棄地の問題の解消方法の一つになります。いろんな地域でそれぞれ異なる品種のオリーブを育てれば、それぞれが喧嘩しない(安売り合戦ではない)産物になると思います。またそうすることで、オリーブを通して地域のブランディングもできると考えています。品種を大切にして、地域ごとにある品種に特化する。そしてその町の味を作る。隣の町には、隣の町の味があってね。さらに町と町のブレンドをしても面白いですし。」
オリーブの正しい知識を用いて、地域を活性化していく。ヨーロッパでは当たり前のように行われていますから
山本 康弘
1970年3月9日福岡県筑紫郡那珂川市出身。みかん・米農家の家に生まれる。高校卒業後、実家の後を継ぐ。露地栽培、施設栽培、契約栽培を経て、オリーブにたどり着く。オリーブの栽培を始めたきっかけは苗の管理を依頼されたこと。「これからの時代、六次産業までしないと農家はやっていけない。」という考えから思い切った決断をした。2006年、小豆島にてオリーブの栽培を学ぶ。2007年、オリーブのことをより深く知るために、イタリアへ。イタリアにて、オリーブ栽培に関する様々な知識を吸収し、その経験を積む。